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・・・・・・ 鋼の錬金術師で10のお題 ・・・・・・
配布元→ SWEET DOLL
――― 01. 鋼の決意
俺の名前は、エドワード・エルリック。
最年少で国家錬金術師になった、超天才だ。賢者の石を求める旅を終えた現在は、俺様の有り余る才能を軍に提供してやりながら、ようやく取り戻した弟と二人で暮らしている。
そして俺は今日、朝目覚めるなりある決心をしたのだった。
「よし、今日こそアルフォンスにプロポーズするぞ。」
俺はグッと拳を握り締め、勢いよくベッドを後にした。
バタバタと廊下を走り、リビングの扉を開ける。中からは、香ばしい香りが漂ってきた。
「あれ、おはよー兄さん。珍しく早いね。」 「アル、大事な話があるんだ。」 「あ、その前に顔洗ってきなよ。」 「あ、うん。」
ペタペタと廊下を歩きながら小さく舌打ち。駄目だ、ついついアルのペースに流されてしまう。 冷たい水で顔を洗い、俺はもう一度気を引き締めた。
「アル、大事な話があるんだ。・・・その、お、俺達の将来について。」 「ふーん、食べながらでいい?冷めちゃう。」 「あ、あぁ。」
・・・またしても出ばなをくじかれてしまったが、まぁ、仕方ないな。アルのメシは冷めてても美味いけど、温かい方がいいしな。 つうか俺は、お前が作ってくれたものなら、何でも美味く感じるぞ!いつも当たり前のように作ってくれることにスゲー感謝してるし、これからもアルのメシは世界一美味いって、いつも俺のためにありがとうなって忘れずに伝え続けるから、なぁアルフォンス!ずっと俺の側にいてくれないか?
「あーもう、十九にもなって子供みたいなことしないでよ。」
そう言ってアルフォンスは、俺の口元に付いたジャムを指で拭った。その仕草に見惚れる。 なんかもうプロポーズ通り越して、すでに新婚家庭が築かれていると思うのは、きっと俺だけじゃないはずだ。
「ごちそうさま。ちょっと兄さん、ぼーっとしてないでさっさと食べてよ!片付けらんないでしょ?」 「あ、わり。」
俺は慌ててトーストに噛り付いた。あれ、何か忘れてねぇか?
「・・・っ!そうだ、アル!大事な話が・・」
って、キッチンに目を向けたら、いねぇし!
「アールー!俺の大事な話ー!」 「もー、うるさいよ!今日は会議だから急いでるんだってば。今言って!」
どうやら自室で着替えているらしい。あぁ、くそ。何だ、このムードのないシチュエーションは!こっちは食事中だし、むこうは身支度の途中だし。アルの顔すら見えないんですけど?
「・・・・・・アールー!」 「聞こえてるよ!」
アルフォンスがリビングに入ってきた。弁当を鞄に突っ込んでいる。
「アル、俺とけっこん・・」 「あー!!この時計止まってるじゃないか!」 「ッちょ待て、アル!」
俺はアルを捕まえようと手を伸ばしたが、アルフォンスは吹き抜ける風のように玄関から出ていった。
「俺の大事な話―!」
俺の絶叫と、玄関の扉が閉まる音が、ひとりぼっちの部屋に響いた。
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――― 02. 焔の野望
中央司令部のとある一角で。
アルフォンスが書類のチェックをしながら廊下を歩いていると、向こう側から来た我らが上司に出くわした。いつも以上にキラキラしている。 きっと、何かいいことでもあったのだろう。美しい女性に声をかけられたとか、ホークアイ中尉がちょっぴり優しかったとか。
そのキラキラしたままのマスタング大佐は、アルフォンスの前まで来るとおもむろに笑みを浮かべた。
「やぁ、アルフォンス。今日も仕事熱心だな。」 「はい、今から会議もありますし。」 「まったく、鋼のとは大違いだな。」 「いつもすみません。僕と兄を足して二で割れば、丁度いい感じになると思うんですけどね。」
アルフォンスは、兄の素行の悪さを思い浮かべて肩をすくめた。
「君は少し、あれに甘くないか?この間も締め切り間際の書類の整理を手伝っていただろう。」 「うーん、そうかもしれません。・・・でも、手伝ってあげると、本当に嬉しそうな顔でありがとうって言うんですよね。それ見ちゃうと、また手伝ってあげようかな、なんて思っちゃうんですよね。」
苦笑するアルフォンスに、なにやら大佐は頷いている。
「そうか・・・。アルフォンス、君は将来良い嫁さんになるな。」 「僕、男ですけど。」
アルフォンスのもっともな反論は、大佐の笑顔に掻き消える。
「そういえば、さっきハボック達と話していたのだが・・・。君は、私の野望を知っているかね?」 「はい。大総統の地位に着き、この国をより良い方向へ導く・・」 「いや、そちらではない。」 「・・・はい?」 「ミニスカートの方だ。」 「・・・・・・あ、あぁ。そういえば、聞いたことがあります。軍の女性をミニスカートにするって。(・・・うわぁー、それって冗談じゃなかったんだ。)」
ちょっと引き気味のアルフォンスをよそに、大佐は上機嫌なまま話を続ける。
「それで、さっき思い付いたのだが・・・。アルフォンス!」 「は、はい・・・?」 「私の野望が叶ったあかつきには、君にもぜひ、ミニスカートをはいて・・ッ?!」
言い終わらないうちに、アルフォンスの視界から大佐は消えた。それと同時に、パンパンッと乾いた銃声が辺りに響く。 床を見ると、大佐は壁から伸びてきた拳の形の錬成物に殴り倒されていた。
「アル、無事か?!!」 「アルフォンス君、大丈夫?」
声のする方へ視線を向けると、ホークアイ中尉と自分の兄がこちらへと駆けてくる。
「危なかったな、アル!でも、もう安心だぞ!兄ちゃんが助けに来たからな!」 「アルフォンス君、怪我は無い?ごめんなさいね、大佐は後でシメておくから。」 「・・・は、はい。」
アルフォンスは呆気にとられながらも返事をし、ハグしようと両手を広げた自分の兄をサッとよけた。
「はがねのー!!」
ぼろぼろになった大佐が復活する。上司の威厳は粉々だ。
「君は何故、私の邪魔をするのだ?!」 「うるせぇ、この変態!俺のアルに近寄るな、汚らわしい!」 「何を言っている!君だって見たいだろう?アルフォンスのミニスカートを!」
堂々と力説する大佐の言葉にエドワードは一瞬揺らいだが、すぐにキッと大佐を見据えた。
「そんな可愛いアルを人目に晒してたまるか!アンタみたいな危ないヤツに狙われるだろーが!」 「意地を張るな、鋼の。本当は見たいんだろう?私が大総統命令でそれを叶えてやると言っているのだ。素直に喜びたまえ!」 「いーんだよ俺は、ミニスカートなんか!そのうちアルには、ウェディングドレス着せるんだからな!」
はい・・・?アルフォンスは自分の耳を疑った。ウェディングドレスって何だっけ・・・。
「何だと?!式にはもちろん私も招待するんだろうな?!」 「は!誰がアンタみたいな変態呼ぶかっ!」 「貴様!結婚式に自分の上司を呼ぶのは常識だろう?!スピーチでも何でもしてやる、なんだったら式の途中で花嫁をさらっていく正義の味方の役でもいいぞ!」 「いらねーよ!アルと二人っきりでやるんだから邪魔すんな!!」
二人はとうとう、廊下の真ん中で取っ組み合いを始めてしまった。助けを求めるように隣を見たら、中尉は至極真面目な顔でアルフォンスを見た。
「・・・・・・写真だけでも見せてくれないかしら?」 「・・・・・・はい?」 「あなた達の結婚式の時のことよ。アルフォンス君にはきっと、白のドレスが似合うと思うわ。」 「・・・中尉、僕は男です。」
それにあの人も男で、しかも兄ですから。 アルフォンスのもっともな反論は、すぐそこで始まった錬金術バトルの騒音に掻き消えたのだった。
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――― 03. 鎧の思慕
僕は基本的に、自分の兄を敬愛している。
兄はたったひとりの家族として、僕を守って愛してくれる。そして、そのための努力を惜しまない。 そんな姿を隣で見ていれば、尊敬の念が生まれるのも当然だろう。
何と言ったって、自分の右腕を犠牲にしてまで僕の魂を取り戻してくれた、兄なのだから。
けれども、しかし。
僕は最近、困っている。そんな兄の行動に。
当の本人はそれを家族のスキンシップだとか、家族の愛情表現だとか、お前が心配だからとか言っているけど、これはちょっとやりすぎなんじゃないだろうかと戸惑ってしまう。
この歳でハグやキスを僕に求めるのは、いい加減にして欲しい。 一緒に出かけるのは別にいいけど、手を繋ぎたいと駄々をこねるのも止めて欲しい。 あと、視察とか出張の時に勝手に付いて来ないでよね、ホントに皆に迷惑だから。
最近一番びっくりしたのは、夜中にふと目覚めたら、目の前に兄の顔があったことだ。 ベッドサイドに胡坐をかき、僕の顔を覗き込んでいた。 内心驚きつつも一応何してるのかと聞いてみたら、ちゃんと眠れてるか心配になって見に来たと言う。
確かに、錬成当初ならまだ分かる。あの頃は戻ったばかりの体に慣れなくて、体調を崩すことも多かったから。 けれども、今では至って健康体だ。そんなに心配する必要などないのに。 兄の行動はどこか不可解だ。 あれは過保護の範疇を超えているような気がしてならない。
そう考え始めると、ますます兄の言動が妙に思えてきた。
さっきの出来事だって、そうだ。
軍の廊下の真ん中で上司と言い合いながら、兄は僕にウェディングドレスを着せるだとか、二人きりで結婚式をするとかほざいていたような。 誰かと僕を勘違いしているのか、はたまた幻覚でも見ているのか分からないけれど、もう僕には、兄がどうなっているのか理解できない。
たった一人の家族なのに分かり合えないなんて、本当に悲しいよ。
そういえば、この間も寝言で変なことを言っていた。兄さんがソファーでうたた寝をしていた時のことだ。
このままじゃ風邪引くからとブランケットをかけてあげたら、兄さんは子供みたいに微笑んで、なにやら唇を動かした。 気になったので耳を寄せると、“アル、結婚しよう”という言葉が聞こえてきた。僕の聞き間違いでなければ、の話だが。
硬直する僕と、相変わらず気持ち良さそうに眠る兄さん。僕は色々と考えてみる。
そして多分兄は、アルさん(恐らく女性:“アル”が名前なのか愛称なのかは不明だが)にプロポーズする夢でも見ているのだろう、という推論に達したのだった。
兄さん、好きな人でも出来たのかな? でも、兄さんが女の人と親しくしてる所なんて見たことないけど。 でも僕だってずっと兄さんと一緒にいるわけじゃないし、もう大人なんだから、いつかは結婚とかもありえることだよね? あぁ、相手の人、どんな人だろう?兄さんの好みから言うと、ウィンリィみたいな感じの人かな?
なんて、ちょっぴり寂しいような気持ちで物思いにふけりながら廊下を歩いていると、もの凄いスピードでこちらに近付いてくる足音が聞こえた。
「アールー!!」
その声に振り向くと、恐い顔の兄が肩で息をしていた。
「アル、どーいうつもりだ?!兄を殴って気絶させるなんて!」 「しょうがないじゃない。口で言ったって、聞かないんだから。」
僕はやれやれといった感じに肩をすくめた。 なんだかよく分からなかったけれど、僕がミニスカートをはくとかはかないとかで喧嘩を始めた上司と兄を止めるために、僕は手っ取り早く兄さんを気絶させたのだった。 因みにホークアイ中尉は銃で大佐を脅かした後、問答無用で引きずっていった。
「アル、痛かったんだけど。」 「はいはい、ごめんね。」
一応謝罪したのに、兄はふてくされたままだ。
「アル、チューしてくれたら許す。」 「何でそうなるの?!」
僕が驚くと、兄さんは何故か傷付いた様な顔をした。
「ハッ・・・そうだ、アル!俺、お前に大事な話が・・・。」 「あ、あぁ。今朝、言いかけてたやつ?」
僕がちょこんと首を傾げると、兄さんは何故だか頬を赤くして、改まったように咳払いをした。 錬金術の研究書を読んでいる時よりも、目がマジだった。
「・・・・・・アルフォンス、俺と結婚してくれ。」 「・・・・・・・・・。」
僕は、目を丸くして固まった。
「あ、あぁ・・・えっと、急にごめんな。けど俺、ずっと前から考えてて、ずっとアルに言いたかったんだ。」 「・・・・・・・・・。」
「あ、でも・・・返事がすぐに無理なら、俺、待つから。アルの心の準備ができるまで。」 「・・・・・・・・・。」
「けど、これだけは間違いない。・・・世界で一番アルを愛しているのはこの俺だ。絶対アルのこと、幸せにするから。」 「・・・・・・・・・。」
「アルフォンス、俺と結婚しよう。」 「・・・・・・・・・。」
僕は、自分の体が震え出したのが分かった。ついでに、周りからの痛いくらいの視線も感じる。
あぁ、この震えは何だろう。
これは多分、怒りだ。
僕は、右手を握り締める。
「・・・・・・・・・こんな廊下のど真ん中で、しかも僕相手に、プロポーズの練習すんな!このバカ兄―!!」
僕の右の拳は、キレーに兄さんを殴り飛ばした。
「ちょ、アル・・・?!」 「兄さんなんか、最低だ!よりにもよって僕で練習することないじゃない!」 「コラ待て、お前なに言ってんだ?!練習って・・・」
兄さんは何か言っていたけど、もう知らない。 僕はだんだん悲しくなってきて、その場から逃げ出すように走り出した。
いくつか角を曲がって、自分の部署の前でようやく足を止める。 ハァと息を吐くと、少しだけ冷静になれた。
アレ、僕、どうしてこんなに動揺してるんだろう?よく考えてみると何だか変だ。 だってあれは場所の選び方まずかったけど、言ってみれば兄さんの恋愛相談(?)みたいなものだろう。だったら弟なら、素直に協力して応援してあげたらいいのに。 でも、何だか心がモヤモヤするのだ。
あの兄さんが、僕の知らない女の人にあんな真剣な顔をして、愛してるだとか言うのだと思うと、何故だか胸が苦しくなった。
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――― 04. 黒い暗躍者
「やぁ、ラスト。皆で集まって何してんの?」
「あら、エンヴィー。」
「エンヴィー、おかえりー。」
「お父様がね、今年の夏はバカンスに行きたいって言ってるのよ。だから今、皆で何処がいいかを話し合ってるところなの。」
「ハハッ、そりゃあ楽しみだなぁ。で、いい案は浮かんだの?」
「それが全然駄目ね。ちっともまとまらないわ。」
「おで、食べ物のおいしいところがいいー。」
「そうねぇ。確かに食べ物は重要ね。」
「ま、どこでもいいけどね。」
「・・・そういえばエンヴィー、市内偵察はどうしたの?」
「ちゃんと行ってきたよ。お父様に報告するようなことは無かったけど。・・・あ、でもすっごくおもしろいことはあったんだ。」
「へぇ、そう。・・・ま、どうせエゲツないことなんでしょう?」
「それは聞いてからのお楽しみ。・・・昼頃の話なんだけどー、大通りを駅の方へ向かってたら、目の前に明らかに怪しい奴がいたんだよね!この季節に全身黒ずくめで、しかもフードにマスクにサングラスまでしちゃってんの!」
「・・・それは、かなり不自然ね。」
「そーなんだよ!でも本人は全然気付いてないみたいでさぁ、コソコソ物陰とか移動してんだけど、逆に目立ちまくってんだよねぇ。もう、滑稽としか言いようがないよね!」
「ふうん、その様子だと誰かを尾行でもしてたのかしら?」
「うん、そう思ったからソイツの後、つけてみたんだ。そしたらさ、つけられてたのが誰だったと思う?」
「あら、私達のよく知ってる人間だったの?」
「そうなんだよ!なんと、あの鋼のおチビさんの弟君だったんだ。」
「へぇ。・・・ちょっとグラトニー、そんなものは食べちゃ駄目よ。」
「はぁい。」
「そんでさー、ちょっと目を離した隙に、その黒ずくめの男を見失っちゃったんだよねー。アレーって思ってるうちに、背後からガッて首締められちゃって!」
「はぁ?」
「振り返ってみたら、その黒ずくめの男でさぁ、しかもよく見たら、鋼のおチビさんだったってワケ!」
「・・・どういうこと?」
「どうやらこっちの尾行に気付いてたらしくて、“何してんだ、エンヴィー”って締められちゃった。」
「はぁ、そう。・・・ちょっとアナタ達、真面目に話し合って頂戴。お父様は涼しいところが良いって言ってたでしょう。」
「でさぁ、結局おチビさんは、弟の後なんかつけて何してたんだと思う?聞いて笑っちゃうよね、弟君が他の女と浮気してないか調べてたんだって!!」
「・・・・・・どういうこと?」
「だからあの二人、デキてるんだってさ。」
「・・・・・・兄弟なのに?」
「うん、そう。本当、バカだよねー人間って!」
「・・・何でそんなこと知ってるの?」
「あぁ、それから恋愛相談とかされちゃって。二人でベンチに座って語り合ってたんだよ。つーか、おチビさんの話を聞かされてただけなんだけど。」
「・・・人は見かけによらないものね。」
「そーなんだよ!おチビさん、普段からは想像もできないくらい健気でさー。この間も一大決心してプロポーズしたのに、冗談たと思われて返事が貰えなかったって嘆いてた。」
「・・・それは、大変ね。」
「うん。だから、とりあえず頑張れって励ましといた。あと、この季節に昼間っから黒ずくめは怪しすぎるからってアドバイスもしてあげたんだ。」
「ふうん。あの子達、相変わらずハードな人生送ってるのねぇ。」
「だから見てて、楽しいんじゃないか。」
「そうだけど・・・。」
「本当、人間って愚かで可笑しい生き物だよねー。」
「ねー。」
「あ、こらグラトニー。そんなもの食べちゃ駄目って言ってるでしょう?」
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――― 05. 生まれくる者達に
「ちょっと兄さん、説明してくれない?なんか騒がしいから様子を見に来てみれば、ベンチで嘆いたり叫んだりしている不審者が兄さんだったなんて、僕、本当に恥ずかしかったんだからね!」
「アルー!」
「ちょ、何で抱きつくの!」
「だって感動の再会だろ?」
「はぁ?今朝も会ったし!っていうか、さっき隣に誰かいなかった?」
「あぁ、エンヴィーだよ。たまたまそこで会ったから、喋ってただけ。断じて浮気じゃないからな。」
「(浮気・・・?また、ワケの分からないことを言ってるよ・・・。)ふぅん、で兄さんはここで何してたの?」
「何って、お前をびこ・・・」
「びこう・・・?何?」
「なっ、何でもないっ!散歩してただけ!!」
「ふぅん、もう変なことしないでよ。」
「あぁ、多分。」
「(多分・・・?)じゃ、もう僕行くからね。」
「ま、待て!何処に行くんだ?」
「何処って、買い出しの続きだけど。」
「お、俺も一緒に行きたい。」
「・・・別にいいけど。だったら荷物持ちしてよね。」
「あぁ!」
* * * * *
「はぁ、色々買ったな。」
「うん。これで、ちょっとはクローゼットの中身が充実するね。まぁ、後は兄さんのセンス次第だけど。」
「・・・あれ、これって俺のなの?」
「そうだよ。いっつも同じもんばっかり着てるし、休日に出かける時だって全然オシャレじゃないし。」
「あっ、ありがとう、アル!!」
「ちょっと、もう!どうして抱きつく必要があるの!」
「・・・なんか、こういうの久しぶりだな。子供の頃は、いっつも二人でおつかいに行ってたのに。」
「確かに、懐かしいね。・・・でも近い将来、今度は僕達が自分の子供におつかいを頼むようになるんだよね。時が経つのは早いって言うか・・・」
「そうだなぁ。・・・アルは子供、欲しいか?」
「うん。男の子と女の子と、両方が良いなぁ。」
「そっか。何人くらい?」
「多い方が良いよ。僕は自分に兄弟がいて良かったなって思うもん。」
「俺もそう思う。アルが俺の弟で良かった。」
「でも、自分の子供なんて、今はちょっと想像できないなぁ。」
「そうか?アルと俺の子供だったら、絶対可愛い子供が生まれるに決まってる。」
「(・・・うん?僕と兄さんの子供・・・?)まぁ、そうだといいけど。」
「顔がアル似で性格もそうで、錬金術のセンスは俺似の娘とかが生まれたら、俺すっげー可愛がると思う。」
「(あれ?なんか言ってることがよく分かんないけど・・・)う、うん。美的センスがフツーだと、なお良いけどね。あと、娘なら僕じゃなくて奥さんに似た方が可愛いんじゃないかな?」
「なに言ってんだ。奥さんはお前だろ?なんだ、謙遜してんのか?大丈夫だって!アルが世界で一番可愛いんだから、もっと自信持てよ!」
「(あ、あれー?それ、どういうこと?)・・・う、うん。ぎゃ、逆に兄さんに似たら、可愛いっていうよりかは美人になりそうだよね。」
「そ、そうか?」
「うん。去年、新年会の時に女装させられてたでしょう?あの時の兄さん、特に違和感なくて綺麗だったよ。兄さんって元々、整った顔立ちしてるし。」
「ほ、本当か?あん時は嫌でしょーがなかったけど、アルがそんなに気に入ってくれてんなら俺、いつでも女装してやるよ。」
「(えぇ?何でそんなキラキラした目で僕を見るの?)・・・い、いいよ。アレでもう、十分だから。」
「遠慮すんなよ。俺、アルが喜んでくれるのなら、何でもするからさ。(照)」
「えっ?・・・う、うん。ありがと。(汗)」
「俺達の子供のためにも、幸せな家庭を築こうな、アル!」
「えっ?・・・う、うん。」
「ありがとな、アル。俺、今スゲー幸せ。(感動)」
「??・・・う、うん。(困惑)」
「じゃ、そろそろ帰るか!」
「・・・・・・・・・あぁ、駄目だ。最近兄さんとの意思疎通が図れないよ。困ったなぁ・・・」
「ん?何か言ったか?」
「ううん、何も。」
「そっか。・・・なぁ、手繋いでもいいか?」
「・・・・・・・・・やだよ。」
「ハハっ、照れてるお前も可愛いよ。」
「・・・・・・・・・・・・。」
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兄さんの勘違いはエスカレートしつつ、続きます。 ウロボロス組を出したのは何気に初めてで、不思議な感じでした。 大佐と中尉が変な人になりすぎて、申し訳ない気分です。
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