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!!! 注意 !!! *
このお話は、映画の世界観とは似ても似つかないものになっております。 *
ハイデリヒも出てきますが、性格はかなり捏造されています。 *
設定も映画とは違うので、下の説明をよく読んでから本編を読んでください。 !!! このお話の中での設定 !!! *
エドワード:十八歳、ハイデリヒと一緒に機械工学の研究をしています。アルフォンスとは鎧だった頃から恋人同士に近い関係でした。 *
アルフォンス:見た目は十三歳、髪は長いままです。映画とは違う方法でこちらの世界にやってきたことにしてあります。エドワードと離れていた間も記憶は無くなっておらず、映画のような無邪気な性格ではなく少々すれています。離れている間も何度か兄とハイデリヒのことを夢に見ていました。ハイデリヒのことを「リヒ」と呼び、精神的には同い年なのでためぐちです。 *
ハイデリヒ:十七歳、体は少々弱いですが、死にそうなほどって訳ではないです。兄弟の関係については、アルフォンスがこちらに来る前にエドワードから聞いて知っていました。弟が来る前は、兄から嫌になるほど惚気を聞かされてうんざりしていました。 * 三人はミュンヘンで共同生活をしています。 * エドワードとハイデリヒは見た感じよく分かりませんが、親友です。アルフォンスとハイデリヒは仲がよく、友達と言うよりは家族っていう感じです。二人でよくエドワードをからかったりしています。 * ホーエンハイムも生きていますが、殆ど行方不明です。 * 世の中も概ね平和ってことにしておきます。 *
基本的にはこうだったらおもしろいのになぁという、妄想から生まれたものです。要はアホな話です。 * 以上を了承の上、それでもいいと言う心の広い方は、スクロールしてください。
――― ミュンヘン三人暮らし ――― 穏やかな昼下がり。 本でも読んで休日を満喫しようとしていたハイデリヒの平穏は、ノックの音と共に無情にも破られた。ノックの主はまだ返事もしていないのに、勝手にドアを開けて入ってくる。 ハイデリヒははぁとため息を吐いた。わざわざ確認しなくても、それが誰なのかは分かる。なんせこの部屋に住んでいるのはハイデリヒを除いてあと二人だけだし、二人のうちの可愛い方はこんな無礼なことは決してしない。
「なぁ、アルフォンス・・・俺のこと“兄さん”って呼んでくんね?なんか目とかウルウルさせて、上目遣いで。こう、いかにも誘ってますって感じでさ。なぁたのむか・・・」 ノックの主――エドワードは唐突にこんなことを言い出した。けれどエドワードの言葉が終わらないうちに、ハイデリヒはそれを笑顔で拒絶する。 「嫌です。(ドきっぱり)」 「ケチくさいこと言うなよ!5秒で済むだろ?マジで頼む。俺、もう限界なんだよ。なんかアルが足りなくて、飢え死にしそうなんだって。」 「そんな事、知りませんよ。」 「ったく、何がそんなに嫌なんだよ!人がこんなに頼んでるのに。」 さっきまでの必死な様子をあっさりと翻して、エドワードは不機嫌そうな顔をした。そんなエドワードに、ハイデリヒは無表情でこう告げた。
「・・・・・・何だか抵抗があるんですよね。自分より小さい人に“兄さん”なんて言うのが。」 「・・・・・・・・・!!」 いつものように、エドワードは固まった。 小さいという言葉がエドワードにとって禁句であることは、彼の弟のアルフォンスと同居し始めてから知った、というかアルフォンスに教えてもらった。だからねリヒ、兄さんがウザい時は小さいって言ってやればいいんだよ。そうすれば大人しくなるから。あ、でも前はね、小さいって言うと切れちゃって大変だったんだけど、今はそんなこと無いからそういう意味では兄さんも成長したよねー。などど、可愛い笑顔を浮かべたままの弟は、まるで害虫退治の方法を説明するかのように語った。
徹夜明けのハイデリヒがこの部屋に帰ってきたのは、今朝早くのこと。 まだ誰も起きていないだろうからと静かにドアを開けたのだが、居間からは小さな明かりが零れていた。 不審に思って中を覗くと、シャツを羽織っただけと言うなんともだらしない格好のエドワードが椅子に座っていた。その手に何かを持って、それを額に当てている。 どうしたんですかと声をかければ、ビクッと驚いたエドワードが急いでハイデリヒの方を振り返った。少々裏返った声で、あぁおかえりと返事が返される。その手にあったのは、濡れたタオルだった。 怪我でもしたんですかともう一度尋ねると、あーとかえーとか随分口ごもった後にベッドから落ちて頭打ったんだという何とも歯切れの悪い言葉が返ってきた。目を泳がせてうろたえる姿を見て、ハイデリヒはこともなげに、ベッドから落ちたんじゃなくて蹴落とされたの間違いなんじゃないですかと言ってのけた。そうすると、エドワードは分かりやすく動揺した。 あぁそういうことかと一人納得して、ハイデリヒはあぁまたかと思った。要は二人で一緒に寝ていたところ、痴話喧嘩をしてエドワードが追い出されたと言うことなのだろう。 この二人の痴話喧嘩なんて日常茶飯事だ。気にするだけ無駄だと、分かっているハイデリヒはへこんだエドワードのことなど放っておいて、さっさと自分の部屋に向かった。エドワードの心配よりも、自分の睡眠の方が今は優先事項だった。
朝と呼ぶには少々日が高い時間にハイデリヒが居間に顔を出すと、エドワードはまだそこにいた。ハイデリヒを見つけると力なく笑って、朝飯作ってやろうかと言って狭いキッチンに立った。 三人が同居し始めた頃から特に用事がない場合、食事の用意は当番制になっていた。しかし、今日はアルフォンスの当番の日のはずなのだが・・・。そう思ってアルはどうしたんですかとハイデリヒが尋ねると、どっか出かけたと言う力ない返事が返ってきた。 ハイデリヒはそれを聞いて、少々不安になった。思っていたよりも状況は酷いようだった。あのしっかりしたアルフォンスのことだから、家出なんてことは無いと思うが・・・。 そんなハイデリヒの考えをよそに、少々遅い朝食を作ったエドワードは、さっさと自室に籠ってしまった。
エドワードが何も言ってこないのでハイデリヒは二人のことは放って置くことにしたのだが、結局、こうして巻き込まれてしまっている。
「こんなことしている間に、さっさと謝りに行ってきたらどうなんですか?・・・どうせまた、エドワードさんが悪かったんでしょう?」 呆れたように言うと、エドワードは思いっきりハイデリヒを睨んだ。けれど、そう言われるのも仕方ないことなのだ。実際に過去の事例の場合、原因は大概兄の方にあった。もっとも、くだらないことばかりで痴話喧嘩をしている二人のことだから、その原因も呆れるようなことばかりなのだが。 「っせーなぁ、こっちだって色々事情があんだよ。・・・確かにちょっとは悪いなって思ったけどさ、目の前であんな可愛い事されたら、男として襲わずにはいられねぇだろ!?」 「・・・・・・・・・。」 ハイデリヒは敢えて、何も考えないことにした。 「確かにやりすぎたのは悪かったけどさ、あんなに怒らなくてもいいよな?」 「・・・・・・・・・。」 ハイデリヒは遠くを見た。今日は天気が良い。 「あんなに可愛かったら、誰だって苛めたくなるだろう?!って、アルフォンス、聞いてんのか?」 顔を覗き込んでくるエドワードに、ハイデリヒはにこりと極上の笑みを向けた。 「・・・・・・・・・兄さん、鬱陶しいから出て行ってくれない?」 「・・・・・・・・・!!」 エドワードは、また固まった。 「・・・・・・・・・。」 それをハイデリヒは、冷めた目で見つめた。
沈黙が流れる中、ドアの方から可愛らしい声が聞こえてきた。 「ねぇリヒ、ちょっといい?・・・・・・あ。」 エドワードがちゃんと閉めなかったせいで半開きになったドアから顔を覗かせたのは、他でもないアルフォンスだった。エドワードの姿を見た瞬間に、その顔が曇る。心底いやそうな顔だった。 一方のエドワードは、アルフォンスの声を聞くと同時に振り返って、零れんばかりの笑顔になった。 「おぅアル、いいぞ!遠慮なく入れ!」 ハイデリヒは心の中でここはあなたの部屋じゃありませんからと突っ込み、アルフォンスは完全にエドワードの存在を無視した。エドワードの側を通らないようにわざわざ遠回りをして、ハイデリヒの元に辿り付く。
「ねぇリヒ、聞いてくれる?兄さんったら本当に酷いんだ。・・・なんかもう、一緒には暮らしていけない気がする。」 「大丈夫だよ、アル。僕がちゃんと守ってあげるからね。」 目元をうるうるさせたアルフォンスは、ハイデリヒに縋りつくようにして彼のシャツを握った。そんなアルフォンスに、ハイデリヒは優しげな笑顔を向ける。 そこには完全に、二人だけの世界が出来上がっていた。 「・・・っオイ!人のこと無視すんなよっ!!」 エドワードの絶叫に対しても、何の反応も返ってこない。 「本当に?!僕すごく嬉しいっ!」 「困った事があったら、いつでも僕のところにおいでよ。いつでもアルの味方になるからね。」 「うんっ、ありがとう!」 アルフォンスは嬉しそうに、ハイデリヒに抱きついた。ハイデリヒもアルフォンスを守るように、その背に手をまわした。 「オイっ、お前らそんなに引っ付くなっ!早く離れろ!それにハイデリヒ、俺のアルに何かしたら許さねぇからなっ!!」 エドワードはアルフォンスが自分には滅多に見せない笑顔を、あっさりハイデリヒには見せていることにキレた。しかしアルフォンスにとってこの笑顔は、兄をからかうためのものに過ぎない。言わばおもしろがっている時の顔なのだ。けれど、そのことに鈍感なエドワードは気付かない。 「あぁ僕、兄さんじゃなくて、リヒの弟になりたかったなぁ。」 「それは光栄だよ。僕には勿体無いくらいだ。」 アルフォンスとハイデリヒの、本音半分からかい半分の演技は続く。
「・・・・・・・・・なぁアル、俺が悪かった。」 さっきまでの怒りはどこへやら、エドワードは急にしゅんと落ち込んだ。 「そんな事ないよ。兄さんなんかより、リヒの方が素敵だもん。」 「そうかな?アルに言われると、なんか照れるな。」 「・・・・・・・・・なぁアル、謝るから機嫌直せよ?」 「リヒは照れてるところもかわいい。」 「やだな、かわいいのはアルの方だろ?」 「・・・・・・アルフォンス、もうあんなことしませんから、頼むから許してください!・・・ヤベっ、兄ちゃん今、凄く泣きそう。・・・なんか目の前が滲んできた。」 エドワードはそう言って、しょぼんとしたまま自室に帰ってしまった。
夕食の時間になったが、エドワードは要らないと言って部屋から出てこなかった。 そんなエドワードの落ち込みように、さすがのアルフォンスとハイデリヒもどうしたものかと困惑する。
「ごめんねアル、あんなにエドワードさんが落ち込むとは思わなかった。僕がちょっとからかいすぎたせいだね・・・」 食器を洗いながら申し訳なさそうに言うハイデリヒに、アルフォンスは慌てて頭を振った。一つに束ねた金髪が揺れる。 「ううん、リヒのせいじゃないよ!僕が素直じゃないからいけないんだ・・・!」 ハイデリヒの隣で食器を拭く手を止めて、アルフォンスはしゅんとなった。 「ねぇアル、昼間は何を考えていたの?」 「えっとね・・・、何て謝ろうかなって・・・」 「アルも悪かったなって思ってるんだ?」 「うん・・・。基本的には兄さんが悪いんだけど、僕もちょっと怒りすぎたかなって・・・」 俯いてしまったアルフォンスを見て、ハイデリヒはこっそり思う。自分の前ではこんなにも素直な態度を取るのに、兄の前ではどうしてああも意地っ張りなのだろう。 「アルフォンスは、本当にエドワードさんのことが好きなんだね。」 ハイデリヒが尋ねると、アルフォンスは赤くなって頷いた。 「でも、いくら好きでも、たまには素直にならなくちゃね?」 そう言ってハイデリヒは、エドワードの分の夕食がのったトレーをアルフォンスに渡した。
一応ノックをしてみたが返事がないので、アルフォンスは勝手にドアを開けた。 「兄さん、お腹すいたでしょ?」 エドワードは驚いた顔をしたが、黙ってトレーを受け取って食べ始めた。
しばらく続いた沈黙を破るように、アルフォンスは緊張しつつも口を開いた。 「・・・ご、ごめんね兄さん。ちょっと怒り過ぎたかも・・・」 「いや、俺こそごめん。アルがあんまり可愛かったから・・・」 アルフォンスはその言葉に少々カチンと来て、ふうとため息を吐いた。何それ僕が可愛いのがいけないって言うの?大体僕は可愛くないし。と、また言い返しそうになってしまったが、何とか堪える。 「兄さん、僕のこと好き・・・?」 「あぁ、愛してる。」 エドワードは何の臆面もなく言い切った。そういうところが、アルフォンスは堪らなく好きだ。昨夜のことは愛しているが故だと、そういうことにしてあげようと思った。 「じゃ、仲直りしよう?」 そう言うと、エドワードはぱぁっと顔色を変えた。 「それならアル、仲直りのしるしに、今晩は一緒に寝よう。」 「えぇ?」 にこにこしているエドワードに、アルフォンスは昨夜のことを思い出して嫌そうな顔をした。 「心配すんなって。一緒に寝るだけだ。何もしないから。」 「・・・うん、分かった。」
そうして、夜は更けていく。
翌朝ハイデリヒが目を覚ますと、隣ではアルフォンスが安らかな寝息を立てていた。あれぇ?とハイデリヒは頭を掻いた。 仲直りしに行って、そのまま二人で寝たはずなのだが・・・。 「にいさんの・・、ばか・・・」 アルフォンスが苦々しそうに寝言を言った。 これはもしかして、仲直りしに行ったくせにまた喧嘩したとか言うパターンなのだろうか? ハイデリヒはまた、ため息を吐いた。本当に世話の焼ける兄弟だ。この分だと、またエドワードさんが泣きついてくるに違いない。
最近、こんな風景が日常化し始めている。傍迷惑な話ではあるが、まぁ平和だと言えなくもない。
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